【SSF】S級SF作品を探して

ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞作品の詳細なあらすじ、作品中の名言、管理人の感想などを書いていくブログです。

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【あらすじ】『テレパシスト』ジョン・ブラナー【ヒューゴー賞 1965年】

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[評価 = A級] 

 

 

あらすじ

主人公ジェラルド・ハウサンの生い立ち

主人公ジェラルド・ハウサンは、悪名高い革命家でありテロリストである父と、その情婦である母サラとの間に、数々の身体障害を持って生まれた子である。

父はハウサンが生まれる前に大革命の中、産まれてくるハウサンを知らないまま死んでいった。母は妊娠をカタに結婚を強要するアテが外れたため、産まれてきたハウサンに大した愛情を示さなかった。

貧しいスラムの中で、大した教育も受けられずに青年になったハウサンは、やがて自立するが、身体が不自由な彼にできるのは、スラムのバーで店主に怒鳴られながら、おこぼれでもらう皿洗いのような簡単な仕事だけであった。

 

テレパシー能力のめざめ

彼の唯一の楽しみは、映画館に足を運び映画を観ることだけであった。ある夜ハウサンは映画館の中で、近くの席の男二人組の密談をはっきりと「聞き取って」しまう。ハウサンの住むスラムを仕切っているギャングは「スネーク」と呼ばれる冷酷なボスに率いられる一味であるが、男二人組は敵対するギャング団に属しており、金曜日の夜、スネークたちの裏をかいて莫大な取りひきを行おうとしているのであった。

ハウサンは勇気を振り絞ってスネークの根城を訪ね、この情報をスネークに売ることを持ちかけるのであった。この情報がホンモノであることを確認し、現場に踏み込むことに成功したスネークは、ほうびに多額の金をハウサンに与え、ハウサンに今後も情報を売りに来るようにと言い渡す。

ハウサンはこの成功に興奮し、貧しい生活から抜け出す道を見出したと喜ぶが、数日後外出から帰ると、自分が住む安アパートの前にパトカーが止まっているのを見出す。慌てて身を隠し、遠くから聞き耳を立てると、警官たちが自分を逮捕しようとしていること、連行して荒っぽく痛い目に合わせ何もかも吐かせてやろうとしていることなどを「聞き取って」しまう。

 

ハウサンの絶望と、テレパシー能力の開花

ハウサンは大金をアパートに置き去りにしたまま逃亡し、とある倉庫の中に隠れて、何もかもに絶望する。その倉庫は、メアリー・ウィリアムズの家の持ち物であった。メアリーは偶然ハウサンを発見して同情し、食事や水などを与えて匿ってくれた。メアリーは耳が聞こえず、また話すこともできないため、人とコミュニケーションが取れず、このため父からも殴られるなど虐げられており、孤独なのであった。

この倉庫の中でハウサンは、言葉を使わなくてもメアリーに自分の思いを伝えられること、またメアリーの思いを読み取ることができることに気づく。ハウサンはテレパシストなのであり、映画館で密談を聞き取ったのも家の前のパトカーの中の警官の会話を聞き取ったのも、テレパシー能力だったのである。 

メアリーは始めて人とコミュニケーションが取れるようになったことが嬉しく、いわばコミュニケーションにハマり、毎日ハウサンと倉庫の中で時を過ごすようになる。メアリーにテレパシーを使ううち、やがてハウサンのテレパシー能力はどんどん精密で強力なものになっていく。ハウサンは自分の想像世界ーその中でハウサンとメアリーは王や貴族として華麗な生活を行うというものだがーを、メアリーにテレパシーで共有し、二人でその想像世界の中での生活にふけることさえできるまでになる。

メアリーは始めて人とコミュニケーションが取れるようになったことが嬉しく、いわばコミュニケーションにハマり、毎日ハウサンと倉庫の中で時を過ごすようになる。メアリーにテレパシーを使ううち、やがてハウサンのテレパシー能力はどんどん精密で強力なものになっていく。ハウサンは自分の想像世界ーその中でハウサンとメアリーは王や貴族として華麗な生活を行うというものだがーを、メアリーにテレパシーで共有し、二人でその想像世界の中での生活にふけることさえできるまでになる。

 

ハウサン、見出される

「カタパシック・グループ」の悲劇を防ぎ治療を施すために、国連保健機構WHOは中にテレパシストを載せた衛星を地球の周回軌道に打ち上げ、テレパシーの傍受を行なっている。やがてハウサンのテレパシーも発見され、ハウサンはWHOの国際拠点に護送される。

WHOの国際拠点では、多くのテレパシストが医者として勤務している。彼らはこのようなカタパシストの心の中に侵入し、カタパシストが作り出した想像世界の登場人物になり、やがてカタパシストを倒して想像世界を壊し、カタパシストとそのカタパシック・グループを救出するのである。

WHOの国際拠点で治療を受けるハウサンは、やがて世界一の強力な能力を持つテレパシストであることが明らかになる。ハウサンはWHOで医師として働くことを決意する。ハウサンの冒険と伝説が始まる!

 

作品の中の日本

ハラキリ

天才的な芸術的想像力を持ちながらもこれを表現するすべを持たず、絶望した苦学生ルーディが自殺に選んだ手段。恋人クララのアパートのキッチンで、彼は肉切り包丁を使って「ハラキリ」を行う。クララがこれにすぐ気づいたため、ルーディは一命を取り止める。ハウサンの治療を受けた彼は、やがて恋人クララを介して彼の特殊な芸術を表現するすべを得、高名なパフォーマーとなる。ハウサンの指導で目が開けたクララもまたテレパシストなのであった。

感想

ハウサンは世界第一位の超絶的な能力を持つテレパシストです。しかしWHOでの治療と研究が明らかにしたのは、彼のその強大な能力が、彼が生まれつき持つ数々のひどい身体障害や醜い容姿の原因でもあるというでした。

やがてテレパシスト医として世界的な名声を手にしていくハウサンですが、彼はずっとこの障害や容姿に苦しめられます。世界的な名声や達成した偉業も彼を完全には慰めてくれません。

しかし物語の最後で、遂に彼は救いを見出して幸福になります!是非このハッピーエンドを楽しみに、本作品をお読みください。

 


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