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ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞作品の詳細なあらすじ、作品中の名言、管理人の感想などを書いていくブログです。

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【あらすじ】『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』フィリップ・K・ディック【番外編】

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フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の、あらすじと感想です。

 

[評価 = A級] 

 

 

あらすじ

 

終戦争後の世界

終戦争後の全世界に降り続ける「核の灰」により、荒廃した世界。野生の生き物はほぼ死滅しており、わずかに生き残った生き物は、人々の憧れの対象なっており、ペットとして高額で取引されている。ペットは大型であればあるほどよいが、蜘蛛やカエルのような下等な生き物でさえ大変な価値がある。ペットを買うことはステータスとなっている。しかしそれ以前にまず、ペットを買わない、或いはペットに興味が無い人間は、心に血の通わない冷たい人間、倫理的に欠けたところのある人間と見なされている。

 

電気ペット

本物のペットは高額であるため、お金が無く人口動物をペットとして飼う者も多い。人口動物はロボットである。外見は本物そっくりであるが、内部は電気回路がある。行動も本物そっくりに振る舞うが、それらはプログラムにすぎない。目立たない場所に配置されているが、探すと電源のオン・オフやメンテナンス用の制御パネルが体外のどこかに付いている。

 

主人公リックと電気羊

バウンティ・ハンターである主人公リックも、収入がそれほど多いわけではなく、仕方なく電気羊を飼っている。リックの居住する団地は屋上がペット飼育用の芝生となっており、住民たちはここでペットを買っている。リックもここで電気羊を飼っており、毎日エサを与えたりして本物のペットのように世話をしているのである。

 

火星植民地

人類は核の灰の降り止まない地球に見切りをつけ、火星への移住が進んでいる。地球の住民は減り続け、団地などでは半分の部屋が埋まっていれば入居者が入っているほうだ。国連は火星への移住を推進するため、移住者には無料でアンドロイドを贈与している。移住者はアンドロイドを奴隷として使役し、移住先の開拓を行い、暮らしを立てていくことができる。

 

ネクサス6型

アンドロイドはローゼン社が一手に開発を行なっている。アンドロイド開発技術はどんどん進化している。ネクサス6型脳ユニットを搭載する最新の高知能ロボットは、大抵の人間よりも知能が高い。そしてアンドロイドと見分けることも難しくなりつつある。

 

アンドロイドの人権

しかし人々はアンドロイドを生き物と考えない。物語に登場する逃亡アンドロイドの一人のセリフを借りると、「われわれは動物なみにさえ扱われない。われわれぜんぶをひとまとめにしたよりも、ミミズやワラジムシのほうがだいじがられる。」のである。

 

逃亡するアンドロイド

アンドロイドは移住者に提供されるため、火星で開発されている。アンドロイドはときに、自分よりも劣る主人を殺害して、地球に逃亡してくることがある。

 

バウンティ・ハンターの仕事

主人公リックの肩書きは警察の捜査官であるが、その職務は逃亡アンドロイドを追跡し殺害することである。いわゆるバウンティ・ハンターすなわち懸賞稼ぎである。バウンティ・ハンターの基本給は少なく、収入は主に逃亡アンドロイドにかけられた懸賞金である。

 

アンドロイドを見分ける

アンドロイドは人工物であるが、生物学的には生き物である。有機的な存在であり、体内に電気回路の類は一切無い。しかし人工物であるため、細部では人間との差異がある。死亡したアンドロイドの場合、骨髄検査によりアンドロイドであることが確認できる。

 

検査方法

生きているアンドロイドを見分ける検査方法もいくつか確立され、バウンティ・ハンターによって使用されている。

 

検査方法:脊椎反射

例えば脊椎の上部神経節でおこる反射反応の速さを測定する試験がある。試験は簡単で、音声か閃光を刺激として使用する。被験者は刺激にボタンを押して反応し、この反応の速さを測定する試験法である。アンドロイドはこの反応が人間よりも何マイクロ秒か遅い。

 

フォークト・カンプフ感情移入法

リックが使用する検査法は、フォークト・カンプフ感情移入法である。どれほど知能が高くても、アンドロイドは他の生き物に共感し感情移入を行うことができない。動物になんの愛情も感じず、他の生き物の成功を共に歓んだり、他の生き物の失敗に悲しみを感じたりする能力が欠けているのである。フォークト・カンプフ法では被験者に心理的な質問を行い、その質問に対する神経の反応の大きさや速さを測定するのである。

フォークト・カンプフ法の検査では、例えば、顔面毛細血管の拡張度を測定する。この方法で、ショッキングな質問に対する恥ずかしさや赤面といった反射運動を測定できる。これらの反射運動は自律神経の一時反応といわれ、随意に制御できないのである。

ネクサス6型の集団逃亡

ある日火星から、ネクサス6型高知能アンドロイドが8体、集団で地球に逃亡してくる。リックは高額な懸賞金を狙って、8体のアンドロイドの狩を開始する。賞金で、憧れの本物の動物、それも大型の動物を飼いたいリック。

 

そして物語はクライマックスへ…!

しかしアンドロイドたちは巧妙に人間社会に紛れ込んでいる。中には擬似記憶を移植され、自分がアンドロイドであることを忘れてしまっている者さえいる。彼らはバウンティ・ハンターの追跡をかわし、あるいは反撃しようとする。リックはこの狩を完遂することができるのか…!?

感想

SF映画では別格的傑作とされる「ブレードランナー」の原作です。私も、オンタイムで劇場で観て、映画の世界観に魅了されてしまった一人です。

映画との共通点や違いを楽しんでやろうと読み始めました。ちなみに映画のあの有名な「二つで十分ですよ」も、東京を連想させるネオン瞬く歓楽街も、原作には一切登場しません。原作では地球は、核で荒廃したオワコンです。逆に映画には、原作小説の世界観を理解する上で欠かせない、電気羊が登場しません。これは単に細部が異なるということではなく、両者の世界観や描き出そうとしているテーマが大きく異なることによります。

読了後の結論・感想は「映画と原作は、ほぼ全く独立した作品」です。どちらも素晴らしい作品であることを確認できました。