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ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞作品の詳細なあらすじ、作品中の名言、管理人の感想などを書いていくブログです。

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【あらすじ】『栄光の道』ロバート・ハインライン【ヒューゴー賞 1964年】

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ロバート・ハインライン
の1964ヒューゴー賞受賞作『栄光の道』の、あらすじと感想です。

 

[評価 = A級]

 

 

あらすじ

ベトナム戦争帰りの主人公、オスカー 主人公

オスカーは20台半ばの青年である。母子家庭の貧しい環境に育った彼は、苦労して大学に進学し工学を学ぶが、学業の途中でベトナム戦争に徴兵され、大学中退を余儀なくされてしまう。

 

帰還後の不遇

ベトナム戦争では誰よりも多く戦闘任務に送り出され、過酷な戦いを戦い抜いたオスカーであった。やがて彼は戦闘で顔に大きな傷を負い、退役する。しかし米兵の立場はあくまでもベトナム軍の軍事顧問であり、退役軍人として正当に扱われ軍人恩給を与えられることはなかった。

 

美女「スター」に「英雄」として雇われる

恩給で大学への復学を考えていたオスカーは、すっかりあてが外れてしまう。ふらりと訪れたニースで毎日退廃的な生活を送っていたオスカーは、ある日新聞広告に、「勇敢な英雄募集」という記事を見つけ、この募集に応募する。

募集主は美女「スター」であった。オスカーは、美女スター、そしてオスカーの下男として仕えることになる勇者ルーフォとともに3人で、大剣レイディ・ヴィヴァマスを携え、時空を超えた冒険に旅立つのであった。「栄光の道」の始まりである。

 

ミッション:惑星ネピアでフェニックスの卵を取り返せ

時空を超えて瞬時に到着した場所は、惑星ネピアであった。目的は、20の宇宙を統べる皇帝のもとから反逆者によって盗み出された、フェニックスの卵を奪い返すことである。フェニックスの卵はカース・ホケッシュに建つ塔の中に隠されているが、カース・ホケッシュに繋がるゲートは、この惑星ネピアにあるのだ。

 

待ち受ける困難の数々

フェニックスの卵を取り戻そうとする一行に、次々と襲いかかる強敵、ゴーレム、ホーンテッド・ゴースト、吸血トビ、ドラルの荘園でのトラブル、凶暴な野豚とネズミの森、蛇トカゲの鍾乳洞、カース・ホケッシュの塔を守るソウル・イーター(魂食い)。

 

そしてクライマックスへ

一行はこれらの難敵に打ち勝ち、フェニックスの卵を取り戻すことができるのか?美女「スター」の真の目的と正体は?オスカーが「英雄」として雇われた真の理由は?衝撃の真実が、ミッションの最後で明らかになる…!

 

感想

ヒューゴー賞常連の、巨匠ロバート・ハインライン。前回の受賞作『宇宙の戦士』では、機動歩兵が着用するパワード・スーツへの徹底したこだわりと細部に至る描写で楽しませてくれました。また前々回の受賞作『大宇宙の少年』では、懸賞で手に入れた中古の宇宙服を、主人公の少年がカスタマイズしていく過程の描写で楽しませてくれました。

そんな未来技術やメカのリアルな描写が巧みなロバート・ハインラインの、しかしこの作品は純粋なファンタジーです。SF要素は一切含まれません。

本格ファンタジーをも描き切ってしまう、ハインラインの力量を示す作品ですが、やはりハインラインにはSFを書いてほしいと思ってしまいますね。

ファンタジーということもあり、主人公が飛び込んだ異世界はちょっと中世的な世界観です…。「英雄」である男性主人公オスカーは、美女「スター」に「主人である僕にそんな生意気な口を聞くなら、お尻を叩いてお仕置きが必要だな」といった発言をしますし、美女スターはそれに対して「ダーリンお許しになって」といった答え方をします。

ドラル家では「英雄」(ラノベでいう「勇者様」に相当)の訪問は、一生に一度あるかないかの光栄ととらえられ、是非「英雄」のタネを家系に授かりたいと、ドラルは妻、長女、次女(まだ少女。中学生くらい?)の3人をまとめて(順番にではなく)オスカーの寝室に夜伽の相手として送り込みます。

ハインラインは「アメリカの現代社会では理解に苦しむ、異世界の中の習慣や価値観」とちゃんとことわって、あくまでファンタジーの演出として書いています。でも現代の女性読者さんは、怒って本を床に叩きつけてしまうかもしれません…。

 

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