【SSF】S級SF作品を探して

ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞作品の詳細なあらすじ、作品中の名言、管理人の感想などを書いていくブログです。

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【感想】『高い城の男』フィリップ・K・ディック【ヒューゴー賞 1963年】

フィリップ・K・ディックの1963ヒューゴー賞受賞作『高い城の男』の感想です。

 

[評価 = S級]

 

 

オムニバス風の構成

この長編小説には複数の主人公が登場します。主な主人公は以下の4名でしょうか。

日本人向け骨董品店店主チルダ。軽蔑と恐れという両方の感情を持ちながら、日本人にペコペコしています。アメリカのレトロ製品、と言っても例えば1938年型ミッキーマウス・ウォッチなど、が高額で日本人に売れることを知って商売を始め、今では高級店の店主です。知らずに多数の密造品を扱っていました。やがて密造品から足を洗った職人フランクの銀細工品の不思議な力から、アメリカ人としての誇りを取り戻していくようになります。

職人フランク。日本人向けのアメリカのレトロ製品の密造品を作っていた職人。独立してオリジナルの銀細工品を製作・販売するようになります。作品を意気揚々とチルダンの店に持ち込みますが、老獪なチルダンに足元を見られ、屈辱的な条件で作品を委託販売してもらうことになります。

カフェのウェイトレス、ジュリアナ。職人フランクの元妻。自称イタリア人ジョーのアベンゼン暗殺計画への協力を強制されますが、カミソリで勇敢に反撃してジョーに致命傷を与え、脱出に成功します。

日本人高級官僚、田上。ドイツの「タンポポ計画」阻止のため田上を極秘訪問中のドイツ人バイデンを暗殺すべく、白昼堂々と日本の領事館に侵入してきたならず者の武装集団を、華麗な銃さばきで返り討ちにします。チルダンから預かった、職人フランクの銀細工品の不思議な力から、日本とドイツが敗戦したパラレルワールド(我々の知る世界ですね)を垣間見ます。

 

主人公たちの関係は緩やかです。彼/彼女らの物語はほぼ独立して進んでいきますが、交互に描かれる彼らの物語は時折交差し、互いに影響を与えあい、やがて「日本とドイツが敗戦した世界が実在する」という予言的な結論に収斂していくのです。

 

S級作品だが、魅力を伝えにくい

間違いなくS級作品で、読んでいて非常に面白いのですが、このようなオムニバス風の構成になっているため、あらすじを伝えにくい作品となっています。

テーマも、「もう一つの世界、アメリカが戦勝国で日独が敗戦国という世界、がパラレルワールドに存在すること。このことを、素朴な工芸品に込められたアメリカ人の誇りと、易経の神秘的な力が、主人公たちに体験的に気づかせる」というようなものです。

「どういう意味か、作品を読んでくれ」としか言いようがなく、これもまた作品の魅力を伝えにくくしています。

作品を読ませたくて、私の子ども(SFが割と好き)に色々とプレゼンしましたが、ぽかんとしてましたね…。

まぁ、「第二次世界大戦に日独が勝利した世界を描いた、巨匠フィリップ・K・ディックの作品」といえば、それで十分かもしれませんね!

 

日本とドイツの描かれ方

作品の設定が「黄色人種に支配されるアメリカ」なので、登場人物たちの日本人に対する感情は、憧れと畏怖、軽蔑と差別が入り混じった、アンビヴァレントなものとなっています。

国家・民族としての日本は、ビジネスに熱心で、支配地域である南米の経済開発に忙しい、不正・腐敗を絶対に許さず、被支配国であるアメリカに対して決して威張らず、ユダヤ人にも寛容な、謙虚な国・民族として描かれています。

日本人官僚田上はかっこいいです。ナチスが送り込んできた武装したならず者たちは、ナチスもならず者もどちらも日本をナメきっているので、白昼堂々と日本領事館に武装して侵入して来ます。日本人の例にもれずアメリカン・レトロの愛好者である田上は、西部劇の時代のレトロなコルトのリボルバーを「ファニング」というテクニックで高速連射し、ならず者たちを殲滅します。

ドイツは、高度な科学技術を有するが、支配地域であるアフリカでジェノサイドを行っており、日本に対してさえ核攻撃を企む、非情で残酷な国家・民族として描かれています。

 

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それではまた…。