【SSF】S級SF作品を探して

ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞作品の詳細なあらすじ、作品中の名言、管理人の感想などを書いていくブログです。

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【あらすじ】『宇宙大作戦 クリンゴンの策略』ロバート・E・ヴァーデマン

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宇宙大作戦」シリーズの作品『クリンゴンの策略』を読む機会がありました。ヒューゴー賞受賞作ではないのですが、今回は番外編としてこの作品をご紹介したいと思います。

 

[評価 = A級]

 

 

あらすじ

今回の使命は、惑星アルナス2の科学調査支援

カーク艦長率いるエンタープライズ号の今回の使命は、惑星アルナス2の科学調査支援です。

惑星アルナス2とその周辺に広がる宇宙空間では、不可解な事象が起きています。同様に科学調査にやってきたと思われるヴァルカン星人の宇宙船トゥ・バウ号が、惑星周回軌道上で停止したまま、乗組員のヴァルカン星人全員が死体で発見されたのです。

エンタープライズ号の乗組員はこの謎の解明に取り組みますが、そんなエンタープライズ号に早々に危機が訪れます。

 

弩級艦(ドレッド・ノート)テラーとの睨み合い

惑星アルナス2は宇宙の辺境にある領有権未確定の地なのですが、この惑星に大量に埋蔵されるトバライン(生命維持装置の資源です)の採掘権を狙う、クリンゴン帝国の弩級艦(ドレッド・ノート)テラーと遭遇してしまうのです。

クリンゴン帝国は好戦的なことで知られ、エンタープライズ号が属する宇宙連邦とは敵対的な関係にあります。

テラーの艦長カランは、宇宙連邦が惑星アルナス2に領土的野心を持っているのではないかと邪推し、エンタープライズ号を監視します。テラーとエンタープライズ号の間で、一触即発の緊張が走ります。

お互いのちょっとした不注意な行動が全面的な恒星間戦争のきっかけになりかねません。そもそもエンタープライズ号は重巡宙艦(ヘビー・クルーザー)であるため、弩級艦であるテラーとの戦力差は圧倒的であり、戦闘が始まれば瞬殺されかねません。

 

狂い始めるエンタープライズ号クルーたち

このような困難な状況の中、カーク艦長は科学調査支援とトゥ・バウ号の謎解明に取り組みます。

ところが惑星アルナス2の軌道上に静止するエンタープライズ号艦内では、この困難な状況に更に輪をかけるような事態が次々に起きていきます。クルーたちが異常な行動を取り始めるのです。あのミスタースポックまでが、恋におち、三角いや四角関係になり、そして泣き上戸になる…!!!???

 

そしてクライマックスへ

この危機を切り抜けてカーク船長、無事にトゥ・バウ号の謎を解決することができるのか!?

 

名言集

名言ではないのですが、機関長スコット(船医マッコイの方だったかな?)が使う個性的な比喩を使うのが面白く、いくつか紹介したいと思います。

 

「太陽が超新星化でもしない限り、奴の注意をそらさせることはできないだろう」

惑星アルナス2の地表で、先住民が残していったはずの超古代遺跡の探索に夢中になっている変人天才科学者スレルヴォン・ダ博士を評して。

 

「約束とか道義なんてものは、奴にとってはピーナッツの殻ほどの価値もない」

テラーの艦長カランとわかり合うことが可能だと信じるカーク艦長への警告。

 

「まるで配管工の悪夢だな」

改造とチューニングでぐちゃぐちゃになってしまった、機関室のエンジン周りの配線を評して。

 

感想

スポックの変容ぶりが興味深い

 あらすじのところでも触れましたが、惑星アルナス2の軌道上の人間には、地球人であるか他星人であるかを問わず、不思議な影響が現れます。

中でもあのミスタースポックが、女性に恋をしてしまったり、女性にモテまくってきゃあきゃあ追っかけられたり、テラーから攻撃を受けた時非常に感情的になってしまって「もうだめだぁ〜」と泣き喚いてしまい、カーク艦長に思いっきりビンタされたりするところが面白かったです。ぶっ飛ばされて尻餅をついてしまうスポックの、「オ、オヤジにも殴られたことないのに」という心の声が聞こえてきそうです。

 

陰謀と駆け引きが中心

謎解きは最後の最後までほとんど進みません(一気に解決します)。

エンタープライズ号もテラーもずっと宇宙空間の起動上に静止したままで、冒険活劇的なシーンはあまりありません。

ストーリーはエンタープライズ号とテラーの間の駆け引きや読み合いが中心と言ってもよく、やや退屈な印象は免れません。

心理戦が好きな読者にはオススメです。

 


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