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ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞作品の詳細なあらすじ、作品中の名言、管理人の感想などを書いていくブログです。

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【あらすじ】『魔法の世界 エスカトープ』アンドレ・ノートン【ヒューゴー賞 1964年】

アンドレノートンの1964ヒューゴー賞受賞作『魔法の世界 エスカトープ』の、あらすじと感想です。

 

[評価 = A級]

 

 

あらすじ

地球人サイモン

主人公サイモンは元軍人である。除隊後はやばいシノギに手を出しすぎたため、裏世界を敵に回してしまい、殺し屋たちを送り込まれて常に命を狙われるハメになってしまっていた。刺客のうち2名はすでに返り討ちにしてやったが、最後の1名は厄介な敵だ。

 

不思議な石シージュ・ペリラス

主人公サイモンがそんな毎日に疲れと嫌気を感じなら、逗留先のベルリンのバーで酒を煽っていたそんなある日、医師を名乗る男ペトロニウスに声をかけられ、不思議な話に勧誘される。

アーサー王伝説に登場する不思議な石シージュ・ペリラスは実在するというのである。この石はアーサー王がその力を発見した石で、この石を試みた騎士6名は異世界へと消えていったという(そのうち2名はのちに帰還して、その石の秘密について語ることになる)。

 

シージュ・ペリラスの力で異世界

医師ペトロニウスは連綿と続くシージュ・ペリラス管理者の、当代の管理者なのだという。サイモンは刺客の罠ではないかと思いつつも、半ばどうにでもなれという気持ちで、ペトロニウスについて行く。そしてシージュ・ペリラスは、ペトロニウスに案内された古い屋敷の庭園に実在した!

シージュ・ペリラスは、3つの灰色の石で形作られた、サイモンがくぐり抜けられるほどの高さのアーチと、その前に置かれたもう一つの石で構成されていた。ペトロニウスの指示でサイモンがアーチの前の石に座ると、石のアーチの中で渦巻きと溶解が起き、やがてアーチの向こう側に荒野の光景が広がって、そこから爽やかな香りの風が吹いてきた。サイモンは魅せられたようにアーチをくぐり、異世界の荒野に旅立って行く。

 

ハンターに追われる魔女

荒野に道を見つけたサイモンはあてもなく歩き続けるが、やがて一人の女逃亡者が狩猟犬とハンターに追われ、追い詰められて窮地に立たされているのを目撃する。サイモンは現代世界から携行していた拳銃で、敵たちと戦い、女を助け出すことに成功する。

 

衛兵司令官コリス

女の正体は、エスカトープ国の有力な魔女であった。追っ手から逃げる魔女とサイモンの二人は、やがて救出のため魔女を迎えに進軍してきた衛兵司令官コリスと遭遇し、エスカトープまで護送される。エスカトープは、西洋の中世のような文明レベルの世界であった。

 

冷酷民族コールダーとの戦い

そのエスカトープは今、戦いの中にあった。エスカトープの西は湾に面しているが、この湾と外洋の間にある重要拠点ゴーム島は、謎の冷酷民族コールダーに占領されてしまっており、やがてコールダーが海を渡りエスカトープに侵略してくるのは時間の問題となっていた。なお衛兵司令官コリスはもともとゴーム島の支配者の一族の一人であったが、コールダーの侵略からのただ一人の生き残りである。

エスカトープでサイモンは、エスカトープの衛兵として、魔女たちや衛兵司令官コリスと共に、コールダーと戦うことを決意する。

 

コールダーのゾンビ?兵

エスカトープ軍はやがて、本土へのコールダーの侵攻を受け、ゴームと開戦し大敗を喫することになる。

コールダーの戦いは実に異様である。まずコールダー兵は皆奴隷兵であり、そこにはエスカトープ人も大勢含まれている。しかし彼らには感情も思考もない。組織も戦略戦術もなく、ただ死を恐れず猪突猛進に特攻を行ってくるだけで、まるでゾンビ兵である。

またコールダーが索敵に用いているらしい鷹は、捕獲に成功してみるとその内部は機械仕掛けになっていて、金属部品や電気配線で作られているのであった。

さらに彼らは、奇襲攻撃に使用されただけなのでまだ正体がわからないが、飛行機か何かの飛行手段を持っているのであった。

明らかに文明レベルが何世紀もエスカトープの先を行っている。彼は外洋の彼方からやってきたと言われているが、そこには高度な文明があるのだろうか?

 

カーステンからの脱出

このようなコールダーと戦い大敗したサイモンたちは、かろうじて脱出に成功し、南の隣国カーステン国に潜伏し、反撃のチャンスを待つ。しかしこのチャンスに乗じてカーステン国は、エスカトープ国からの潜伏者の殲滅を開始する。

 

そしてクライマックスへ

サイモンたち一行は、無事にカーステンを脱出することはできるのか。コールダーに逆襲し、これに勝つことはできるのか。そもそもコールダーたちはどこから来た何者なのか…!?

 

感想

この作品もまたファンタジーですね。1964年ヒューゴー賞受賞作は、この作品を含めて3作品を読みましたが、クリフォード・D・シマックの『中継ステーション』はSFとファンタジーの両方の要素をもつフュージョン作品、ロバート・ハインラインの『栄光の道』はファンタジー作品です。1964年はファンタジーが強かった年みたいですね。

 

主人公は不思議の石「シージュ・ペラリス」の力でエスカトープに来るわけですので、一種の異世界転生もの?

 

冷酷な敵コールダーも、コールダー自身は非常に人数が少ないです。今回の戦いでは、コールダーはわずか1名しか確認されていません。

コールダーは、エスカトープには存在しない電気や機械などの技術を操り、さらった捕虜に外科手術を施したゾンビ兵でエスカトープを侵略しようとします。コールダーもまた主人公同様、何らかの力で現代の地球からエスカトープの世界に来ているのかもしれません。

 

一方の主人公サイモンは魔法の世界を守るために戦い、もう一方のコールダーは科学技術を悪用して魔法世界を侵略しようとしています。

 

なんだか、現代の異世界転生ものやタイムスリップものでよくみかけるような設定ではありませんか?転生して来たのは自分だけではなくて、同じような科学知識を持ちそれを悪用する敵がいるかもしれない、という。

 

この設定は、この時期にはもうファンタジー小説に活用されていたんですね。

 

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