【SSF】S級SF作品を探して

ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞作品の詳細なあらすじ、作品中の名言、管理人の感想などを書いていくブログです。

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【あらすじ】『分解された男』【ヒューゴー賞 1953年】アルフレッド・ベスター

[評価 = A級]

 

あらすじ

若きCEO、ベン・ライク

主人公ベン・ライクは巨大企業モナーク物産の若きCEOです。暴君で独裁者ですが、同時にカリスマ的で非常に魅力的な男でもあります。彼は、火星を本拠地として活動するライバル企業ド・コートニー・カルテルのCEO、クレイ・ド・コートニーの暗殺を企てます。

 

エスパーが犯罪を防止する24世紀

しかし24世紀のこの時代、犯罪を犯して逃げ切ることは限りなく不可能に近づいています。なぜならエスパーが多数生まれるようになっており、彼らが警察、警備業者、病院などあらゆる業界で活躍しているからです。

 

エスパーを出し抜いて完全犯罪に挑むベン・ライク

ベン・ライクは、地下組織「エスパー愛国者連盟」への支援を条件にして、第一級エスパーで精神分析オーガスタス・テイトの協力を得、またエスパーに心を読まれないよう「音楽遮蔽法」つまり心に大音響で「心理音楽」をかけることにより心を武装して、完全犯罪に挑みます。

 

目撃者バーバラ

この試みは成功したかに見えましたが、大きな誤算がありました。クレイ・ド・コートニーの孫娘バーバラに目撃されてしまうのです。

 

ベン・ライクと彼を追うエスパーの死闘

完全犯罪を果たすためにバーバラを追うベン・ライクと、第一級エスパーで警察精神刑事部長であるリンカーン・パウエル。二人の間で、バーバラを巡る激しいチェイスと心理戦が繰り広げられます。

 

そしてクライマックスへ

重犯罪の報いは「分解」刑です。若きベン・ライクはエスパー集団から逃げ切れるのか?そして「分解」刑とは?

 

名言集

「敵は選んで作るべし」「偶然の敵を作るべからず」

主人公ベン・ライクのモットーです。

 

「私が先に聞いたんです。先に答えてちょうだい」

ジョジョの奇妙な冒険吉良吉影の有名なセリフ「質問を質問で返すなあーっ!!」を思い出させますね。 

主人公を追い詰める刑事リンカーン・パウエルに保護された、殺人事件の目撃証人バーバラ。やがて彼女はパウエルを愛するようになります。彼女を子どものように扱うパウエルに対して、彼女は「あなた、私に対して父親らしい気がする?私のほうは、あなたに向かって子供みたいな気になれないの」と問いかけます。パウエル「ほう、というと?」質問返しを行なってはぐらかそうとしますが、それに対するバーバラの切り返しの言葉です。

ちなみにパウエルは「エスパーの誓い」をたてており、非エスパーであるバーバラと愛し合うことは許されないと考えています。

 

感想

エスパーのため犯罪の実行が困難になった未来世界

ちょっとトム・クルーズの映画「マイノリティ・レポート」を思わせる設定ですね。主人公の実業家ベン・ライクも、金持ちで若く魅力的、しかし極めて野心的で傲慢な男と描かれており、トム・クルーズがハマりそうな男です。しかし映画「マイノリティ・レポート」のほうの原作はフィリップ・K・ディックでした(1999年)。

 

映画「マイノリティ・レポート」との違い

一見似ているように思える設定ですが、実際には以下のように大きく異なり、これがそれぞれの作品をそれぞれ異なる面白さに仕上げています。

「マイノリティ・レポート」

超能力者が犯罪を予知して事前逮捕を行うので、犯罪の実行自体が不可能

「分解された男」

超能力者の警備員が人の心を読むので、気づかれずに標的に接近することが難しく、犯罪の成功が困難。また超能力者の刑事が心を読んでくるので、犯罪を犯しても逃げ切ることが困難。

ちょっと「百万ドルを取り返せ」にも似てるかも

主人公ベン・ライクはエスパー警備員や通常の警備員を出し抜いて自分の犯罪計画を成功させるために、「缶詰ゲーム」や「視紅素イオン化爆弾」など様々な作戦やガジェットを使用するわけです。これらの策がハマっていくのを読み進めていく時に感じる一種の爽快感。これはちょっとジェフリー・アーチャーの傑作「百万ドルを取り返せ」を彷彿させる点がありますね。

「音楽遮蔽法」がナイス

エスパー用に作詞作曲された「心理音楽」を買って聞くと、心の第一層の表面意識にこの音楽がずっとぐるぐる回ってノイズとなり、エスパーが意識を読もうとしてもこの音楽ばかりが聞こえて心が読めなくなってしまいます。これを「音楽遮蔽法」といいます。斬新なアイディアだと思いました。ちなみにこれで遮蔽できるのは、レベル3級のエスパーだけです。

 

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