【あらすじ】『殺意の惑星』ハリー・ハリスン【ヒューゴー賞 1962年】
ハリー・ハリスンの1962年ヒューゴー賞受賞作『殺意の惑星』の、あらすじと感想です。
あらすじ
主人公ブライオンの故郷アンヴァール星
アンヴァール星では夏は非常に短く、一年の大半を長く厳しい冬が占めている。宇宙では辺鄙な田舎に過ぎないアンヴァール星では、長い冬は何もすることが無い。
この長い冬の過ごし方として発達したのが二十種競技だ。二十種競技ではスキージャンプ、アーチエリー、フェンシングや格闘といったあらゆるスポーツだけでなく、詩作やチェスなどの芸術や知的ゲームまでもが競われる。まさに総合競技である。二十種競技は国民的競技である。アンヴァール人たちは、二重種競技の各競技を競い、また二十種競技のための鍛錬を続けることにより、この長い冬を過ごすのである。
二十種競技の優勝者ブライオンを訪問するCRF
主人公ブライオンは、二十種競技の今年度の優勝者だ。最終戦のフェンシングの激闘の後病院に入院して治療を受けていたブライオンは、文化交流財団(略してCRF)の惑星ディス責任者イージェルの訪問を受け、惑星ディス救出のため共に働くようスカウトされる。
イージェル曰く、今惑星ディスは重大な危機に陥っており、これを救うために働けるのは二重種競技の優勝者レベルの人間だけなのだと言う。
CRFは、全宇宙が繁栄するよう、平和を促進し、惑星の福祉を保護するために設立された民間団体である。
主人公ブライオンには精神感応力がある。二十種競技で優勝できたのも、この精神感応力により競技相手が読めることの恩恵が少なからずある。
この力を用いてイージェルの感情を読み取ったブライオンは、惑星ディスの危機がなみなみならぬものであることと、ブライオンへの期待の強さを知り、惑星ディスへの同行を了承する。
ブライオンとイージェルは途中、若く美しい女性生物学者リーと合流し、惑星ディスに向かう。
一触即発!惑星ディス
惑星ディス上空の宇宙空間は、今や惑星ニーヨルド軍の航宙戦艦に包囲されていた。三日後、ニーヨルド軍は惑星ディスに水爆攻撃を行い、惑星ディスを殲滅する予定なのだ。
原因を作ったのは惑星ディス自身であった。惑星ディスの人類は外星文明から長期間切り離されて、今では中世〜古代のような文明レベルにまで退化してしまっていた。にも関わらず、「マグダー」と呼ばれる支配階級は外星の兵器商人から跳躍空間ミサイル発射装置(ミサイルを目的地までワープ発射する装置)とコバルト爆弾を購入し、ニーヨルドが降伏しなければ攻撃すると脅しているのである。
ディス人ウルブとの出会い
ディスに着陸した直後、ブライオン一行はマグダーの奇襲を受ける。この攻撃で、イージェルを失い、迎えに来てくれた砂上車をクルーもろとも破壊されてしまう。
生き残ったブライオンとリーは、砂上車の轍を頼りに、徒歩で都市を目指す。都市までは百キロ以上もの距離がある。やがてリーは熱中症で意識を失ってしまうが、ブライオンは不屈の闘志でリーを抱いて歩き続ける。
いよいよブライオンも力尽きようとした時に、砂漠で活動中だった土着部族のリーダー格の一人、ウルブと出会う。土着民は好戦的で、外星から来たよそ者であるCRFスタッフとの間に友好関係は全く無い。しかしブライオンは精神感応力を用いてウルブの警戒を解くことに成功し、ウルブに救われる。
問題解決に動き出すブライオン
CRFのディス本部ビルに到着したブライオンとリー一行。
ブライオンは、惑星ディスがニーヨルドを脅迫する動機も、コバルト爆弾の隠し場所も、何一つ本部では解明できていないこと、本部が忙しく準備している仕事は、最早ディスからの脱出だけであることを知る。ブライオンは、自分で問題解決の手がかりを見つけることを決意する。
土着民
自分で問題解決の手がかりを見つけることを決意したブライオンは、まずウルブを通じて土着民の集落を訪問することに成功する。ブライオンは、土着民は勇敢な部族ではあるもののニーヨルドと戦争をすることなどは望んでおらず、支配階級マグダーの行動に不安を感じていることを知る。
おそるべき支配者階級マグダー
次にブライオンが向かったのは、支配階級マグダー達が住む塔の一つであった。
マグダー達が集まって来た大広間でブライオンは、ニーヨルドが降伏を拒否したことを告げる。それを聞いたマグターのリーダー格の一人は、ナイフを振りかざして躊躇なくブライオンに襲いかかって来た。
ブライオンは死闘の末これを倒すが、この戦いの最中、ブライオンは精神感応力を通して、マグダーには死に対する恐怖が全く無いこと、それどころかいかなる感情さえ無いことを知る。
そしてクライマックスへ
ブライオンは、マグダーの好戦性と、ニーヨルド軍を攻撃する理由などの謎を解き明かし、惑星ディスとニーヨルドを救うことができるのか…!?
未来技術
ハリー・ハリスンの1962年ヒューゴー賞受賞作『殺意の惑星』に登場する、未来技術です。
エンパシー能力
他人の精神に入り込める能力。思考の透視というより、情動・気分・態度を感じ取る能力。投射エンパシー(こちらの感情を相手に伝える)と受容エンパシーがある。
ランゲージ・ボックス
自動催眠で睡眠学習を行う装置。惑星ディスへの航行中、主人公がディス語の文法と単語のマスターに使用。
跳躍空間ミサイル発射装置
要はワープミサイル。惑星間戦争に使用される兵器。
網膜認証
網膜パターンを登録すると、登録した網膜パターンに網膜紋番号が割り振られ、以後網膜認証に使用できるようになる。
舷窓の不透明化
透明にしたり不透明にしたりできる窓。航宙船で採用。
最新のボーイング747が似たような窓を客席に採用してますね。
ヴィード
惑星ディスに生息する、植物みたいな生き物。光合成から水を体内に蓄えることができる。旅行用の携帯水筒としてディス人に使用されている。 花びらみたいな口に吸い付くと水を提供してくれるが、代償として小さな針を何本も突き出して血を吸ってくる。
プラスチックシート
レコードとスピーカーと電源が一体になったような記録媒体。 ボタンを押すと、押し続けている間電流が発生し、シートがスピーカーのように振動して音を再生する。
消去波放射機
振動のカーテンを放出する装置。このカーテンは全ての光線を吸収し、カーテンの裏にあるものを遮蔽する。一種の光学迷彩。軍の作戦行動で使用される。
記憶消去剤
過去十数時間〜十二時間くらいの記憶をひっぺがしてくれる薬。
「メンインブラック」のあのピカッと光るペン型装置の、薬版ですね。
作品の中の日本
ハリー・ハリスンの1962年ヒューゴー賞受賞作『殺意の惑星』中で描かれる日本をご紹介します。
空手の手刀
マグダーとの死闘における、主人公ブライオンの決め技。
感想
著者ハリー・ハリスンのもう一つのヒューゴー賞受賞作、「死の世界1」でまとめて書いています。ぜひご覧になってみてください。
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