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ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞作品の詳細なあらすじ、作品中の名言、管理人の感想などを書いていくブログです。

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【あらすじ】『ヴィーナス・プラスX』シオドア・スタージョン【ヒューゴー賞 1961年】

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シオドア・スタージョン
1961年ヒューゴー賞受賞作『ヴィーナス・プラスX』の、書評です。

 

[評価 = A級]

 

あらすじ

ある日別世界で覚醒するチャーリー

主人公チャーリーがある日眼を覚ますと、そこには全く異質の世界が広がっていました。そこは医療施設のような場所のベッドの上でしたが、窓の外に見える空は一面穏やかな銀色に光っており、青空も雲もありません。

 

レダム人たちの訪問

やがてチャーリーを「レダム人」たちが訪れてくるようになります。レダム人たちは奇妙な衣服を身につけており、男性のようではあるが性別がはっきり区別できず、言語もチャーリーには全く理解できません。

チャーリーはやがて医療施設から教育施設に移動され、「セレブロ・スタイル」を使用してレダム語を習得します。

 

両性具有のレダム人

レダム人たちとのコミュニケーションが可能になったチャーリーは、レダム人について多くを知ります。レダム人は両性具有であり、男性や女性といった性別が無いこと(ただし外見はホモ・サピエンスでいう男性に近い)。パートナーと結ばれると、二人は同時に妊娠することになること。超未来技術を持ち、極めて高度な文明を発達させていること。

 

レダム文明の評価を依頼されるチャーリー

またチャーリーは、レダムは異星ではなく未来の地球であると告げられます。またチャーリーは、レダム人が現代の地球に送り込んだ無人タイムマシンで釣り上げられた、ホモ・サピエンスのサンプルであるとも告げられます。

 

そしてクライマックスへ

レダム人はチャーリーに、ホモ・サピエンスの目から見てレダムの文明がどのように映るのかを評価することを依頼します。何故?現代の地球でこれから何が起きるというのでしょうか?

レダム人の文明を自由に学ぶうちにチャーリーが辿り着いたのは、レダム人たちの驚くべき正体なのでした…。

 

未来技術

シオドア・スタージョン1961年ヒューゴー賞受賞作『ヴィーナス・プラスX』に登場する、未来技術です。

 

脱固定装置

靴べら状の装置。 物質の中の「生物固定力」を無力化する道具。レダム人の服は、生物固定力で服同士くっつきあったり、レダム人の身体にくっついたりしています。この力で身体に固定している服を脱固定装置で触れると、服はベロンとはがれて脱げる仕組みになっています。

 

Aフィールド

Aフィールドことアナログフィールドは、レダムの主要な動力です。電気モーターにできることは全てこなせます。 シグナルを送り込むと、そのシグナルが百倍に増幅されて出てくるような装置です。

物語の中では、身近な例としてリング状のスプーンが登場します。このスプーンはリング状つまり大きな穴が空いていますが、リングがフォースフィールド発生装置になっており、輪の中にリングの相同物(アナログ)を発生するため、きちんとスプーンとして機能します。

どんなものの相同物も作り出すことが可能で、Aフィールドはあらゆる物を作る基礎となっています。 Aフィールドはどのようにでも変化させることが可能。厚くしたり、薄くしたり、スプーンのように不浸透性にしたり、硬くしたり。

反物質(電子が正の電荷、核が負の電荷をもつ。通常物質と接触したら大爆発が生じる)の相同物を発生させ、これを通常物質と反応させる事により、莫大なエネルギーを生み出すことも可能です。

レダムの世界はAフィールドの膜(空)に包まれており、その内側にあります。地上から見上げると穏やかな銀色に輝いて見える空は、内側から見上げた Aフィールドの膜なのでした。

 

セレブロスタイル

脳が行なったその人物の思索・学習を、シナプス結合が形成されて行った跡(順序)を辿る事によって記録します。

結論だけを伝えるのではなく、そこに至った思索や試行錯誤の経緯の全てを伝えることができるため、実体験に近い形で知識を伝えることが可能です。

 

情報ブロック

セレブロスタイルのライブラリのようなものです。必要な知識を伝えるために必要な情報ブロックを選び、セレブロスタイルにかけて学習します。 

 

感想

当初は生まれながらの両性具有と見えたレダム人。愛し合うカップルが肉体的に結ばれる時、片方が他方に結合するのではなく、両者がお互いに結合します。チャーリーにはこれは当初とても素晴らしいことに見えました。

 

しかしチャーリーは、これは遺伝的な形質ではなく、生後の外科手術により実現されている形質であり、レダム人は生物的にはもともと男性であることを知ります。

 

それを知ったチャーリーは激しい嫌悪感を抱き、「このホ○のオ○○野郎どもがぁ!きしょいんじゃあ!」的な捨て台詞をレダム人たちに浴びせかけて逃走します。

 

確かジム・キャリー主演の90年代の映画「ライアーライアー」でしたっけ?ぶつかった弾みで男とチューしてしまった主人公が、悲鳴をあげながら超オーバーリアクションで、洗面所でグチュグチュペーするシーンがありましたよね。まぁ、チャーリーのも同じようなリアクションですね。

 

60年代だから書けた作品であり、LGBTの人権が尊重される現代に新作として発表されていたら炎上していた可能性がありますね。

 

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